全国民に20万円を給付を提言 新型肺炎受け2団体by 高橋清隆 2020年2月29日(高橋清隆の文書館より)

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本経済復活の会・就職氷河期当事者全国ネットワークの両団体有志が2月28日、財務省に現金20万円の全国民への給付を求める要請を行った。

財務省の担当者に要請書を手渡す小野(左から2人目)・増山(同3人目)ら(敬称略、2020.2.28筆者撮影)
財務省の担当者に要請書を手渡す小野(左から2人目)・増山(同3人目)ら(敬称略、2020.2.28筆者撮影)

 要請を行ったのは、「復活の会」の小野盛司会長や「氷河期ネット」の増山麗奈代表ら4人。要請書は緊急提言として、「政府は全国民に1人当たり20万円を配布すべきだ」と記し、日本経済新聞社のマクロ経済モデル「NEEDS」を使った試算結果を掲載する。  

 

 全国民に20万円を配るのに必要な予算は25.2兆円。試算によれば、2020年度のGDP押し上げ効果は名目で2.3%、実質で2.2%、実質民間消費を15兆円押し上げる。2021年度、名目GDPは614兆円まで伸びる。  

 

 一方、消費者物価押し上げ効果は0.05ポイントにとどまり、インフレ目標の2%には遠く届かない。長期金利は0.02ポイントの上昇で、マイナス金利からの脱出もできず、国債暴落もあり得ない数字だ。

 

 賛同者には樋口浩義・筑波学院大教授や朴勝俊・関西学院大教授、井上智洋・駒澤大准教授らも名を連ねる。

 

 一行は財務省大臣官房地方課の職員2人に要請書を手渡した。その際、増山氏は小中高校などの休校要請に関し、「麻生太郎大臣が昨日の会見で、『こういう要請をして経費がかかる場合は政府が払うのは当然』と述べた。ぜひ前向きにご検討ください」と言い添え、必ず麻生財務省に渡すよう念を押した。

 

 小野氏は、「1人当たり20万円配るアイデアは、私というより安倍(晋三)総理と菅(義偉)官房長官が2009年に20名超の議員連盟をつくり、フジテレビの『報道2001』で発表している」とくぎを刺した。日経「NEEDS」が非常に信頼できるモデルだとした上で、「GDPは上がるし、消費も住宅投資も伸びる。ハイパーインフレを恐れる人はいるかもしれないが、物価押し上げ効果は非常に少なく、政府のインフレ目標まで上げる力はない」と強調した。

 

 さらに小野氏は、主要国の労働分配率を表したグラフを示す。わが国は1970年代後半、67%超だったが、2000年代後半から56%程度にまで低下。ただし、この傾向は他国も同様だ。「世界的に下がっている。何が一番いいかと考えると、20万円を配ること。今やればタイミングがいい。休業すれば困り、生活できない人がいっぱいいる」と補足した。

 

 要請後、厚生労働省内で開いた会見で、小野氏は「20万円もらえるわけだから、消費が伸びるし、住宅投資も民間設備投資も確実に伸びるほか、輸入も伸びる。だから、トランプ大統領も喜ぶ。さらにいいのは、企業ももうかる。給料を上げてやろうかとなる上、1人20万円、5人家族なら100万円もらえる。国民にとっては二重の喜び」と説明。

 

 「あらゆる経済データは日本経済をよくする。失われた20年にピリオドを打つ第一歩に」と述べ、国民が好感すれば、さらなる財政出動が展開できると観測した。

 

 その上で、「菅さんには、この素晴らしいアイデアをもう1度考えてほしい。安倍さんも覚えているはず。反対する人がいたのでしょう。どうせ言ったのはハイパーインフレになるとか、円の信認が落ちるとか、国債が暴落するとか.しかし、ちゃんと計算した。これがうそだと言うなら、どこがうそか言ってみろという、われわれの挑戦状です」と胸を張った。

 

 増山氏は、非正規労働者に特化した対応にすべきでは問われたのに対し、「子育て中の母親や、非正規の方からの声も頂いている」としてその窮状に同情を示した上で、コロナウイルスの感染拡大に言及。「今すぐ困る状況。まずは非正規だけと分けるのに時間をかけず、今すぐ緊急対策として国民全員に配ることで、結果として非正規やシングルマザーの方、困窮されている方にもプラスになる政策だと思う」と説明した。

 

 筆者が消費税廃止との違いを尋ねた。廃止すれば、消費税収26~27兆円の財政出動をしたことと同じになる。小野氏は「試算すればいいが、消費税廃止は調整が大変」としながら、「どちらも賛成。ただ、こちらは働き口や収入のなくなった人に、即効性がある。安倍さんと菅さんの顔を立て、国民運動としてやればこの時期、通るんじゃないか。安倍さんは今、困っているのでは。言ってみれば、助け舟だ」と官邸に秋波を送った。

 

 小野氏は今後の活動を問われると、「反応を見て、それを足掛かりにぐいぐい進めていきたい」。2003年から「復活の会」が活動する中で、与野党から賛同する国会議員が現れて政界再編に使おうとする気運もあったことを明かし、「マスコミが報道してくださるかによってだいぶ違うが、取っかかりができ、好意的であれば、議員さんもこれに乗っからない手はないとなる」と展望した。

 

 20万円の額の根拠は、ひとえに11年前の安倍・菅の両氏らの提言に基づく。「菅さん、安倍さんが提案したから、反対しにくいのでは。通りやすいはず」と政府の決断に期待を寄せた。

日経「NEEDS」による試算結果(要請書より)
日経「NEEDS」による試算結果(要請書より)