「コロナ不況」対策」として、有志が「国民1人あたり20万円」の支給を財務省に申し入れ 3/10(火) 15:32配信 ハーバー・ビジネス・オンライン

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名目で2.3%、実質で2.2%のGDP押し上げ効果が期待できる!?

 イベント中止や株価低迷、飲食店や宿泊施設は閑古鳥…新型コロナウイルスによる経済的な打撃は深刻で、「コロナ不況」による企業倒産、失業者・生活困窮者の増加が危惧されている。そうした中、日本経済復活の会や就職氷河期当事者全国ネットワーク、ベーシックインカム学会の有志が、「国民一人あたり20万円」の配布を求め、財務省に申し入れ。厚生労働省記者クラブで会見を行った。

 

 会見で、「日本経済復活の会」の小野盛司会長は「新型コロナウイルスや米中貿易摩擦、日韓経済摩擦、消費税増税などが重なり、日本経済は急激に落ち込む可能性が出てきている。緊急策として、全国民一人あたり20万円を配布すべきだ」と訴えた。小野氏によれば、今回の提言は、2009年に菅義偉氏や安倍晋三氏など20人超の国会議員有志で発足させた「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」から着想を得たのだと言う。

 

 菅氏が同年2月1日放送のフジテレビ「報道2001」の中で「政府紙幣を発行し国民一人当たり20万円分を配る」と提案しており、小野氏は「その提案を今こそ実行すべき」と語る。

国民全員に20万円を配布すると「名目で2.3%、実質で2.2%のGDP押し上げ」!? )

 小野氏が日経新聞社のNEEDS日本計算モデルを使って試算したところ、国民全員に20万円を配布すると「名目で2.3%、実質で2.2%のGDP押し上げ効果が期待でき、実質民間消費を15兆円押し上げる」という。その一方で「消費者物価押し上げ効果は0.05ポイント、長期金利は0.02ポイントの上昇でとどまる。ハイパーインフレや国債の暴落などのリスクはない」とのことだ。

 

 小野氏は「先進国の中で日本とイタリア以外は、年収が大きく伸びている。可処分所得を増加させ経済を拡大すべき」「国債発行で財源を確保しつつ、ベーシックインカム*を行うことが日本経済復活のための特効薬となる」と主張。また「20万円給付で個人消費が活発になれば企業の賃上げもすすみ、人々にとっては二重の喜びとなる」と期待を寄せた。 〈*政府が国民全員に無条件で、生活に最低限必要な現金を支給する政策〉

新型コロナ不況対策を皮切りに格差是正も

 会見には、経済学者で駒沢大学准教授の井上智洋氏もメッセージを寄せ「デフレからの完全脱却を果たしていない今、マクロ経済政策に対する考えを抜本的に改めなければ、失われた30年は、40年、50年となるだろう」と20万円配布と緊縮財政からの脱却を呼びかけた。

 

 介護労働者で就職氷河期当事者全国ネットワークのメンバーの諸星たおさんも会見に参加。 「少子高齢化が進む中、介護現場の人員不足が危惧されていますが、低賃金長時間労働で私達は既に限界です。例えば、職場で誰かが新型コロナウイルスに感染したら、その穴埋めするのは難しい」と語る。「人員を増やすためには介護労働で生活していくことが必要です。日本の社会保障制度の持続性は、現場で働く人々一人ひとりの生活の持続性にかかっています」と新型コロナ不況対策を皮切りに、格差是正や労働者が安定して働ける環境つくりをしていくことの重要性を強調した。

新型コロナ経済対策で進む各国の現金給付

 映画監督でベーシックインカム学会理事の増山麗奈氏は「現金の配布というと、日本ではバラマキだの、財源はどうするだのと批判されますが、ベーシックインカムやそれに類似したものは各国で試みられています」と語る。 「新型コロナウイルスによる経済低迷の打開策では、香港政府は18歳以上の全ての市民、約700万人に日本円で1万香港ドル(およそ14万円)を配布することを打ち出しています。韓国では、昨年、同国北西部の京畿道(キョンギド)行政区で、若者を対象に年間100万韓国ウォン(約9万円)を配布する社会実験が行われました。米国のカルフォルニア州でも、つい先日、月1000ドル(約10万7000円)相当のベーシックインカムを配布する法案が州議会に提出され、その動向が注目されています」(増山氏)。

 

<文・写真/志葉玲>